はじめに
私は今まで、何度か転職を経験し、上場企業およびベンチャー企業等の上場準備会社で20年以上経理財務業務を行ってきており、現在は、上場企業の財務経理責任者として働いています。その中で、経理財務スタッフを採用するために書類選考・面接等数多く行ってきました。
経理財務職は専門性が高いため、採用は経験者が主な対象となるため、採用は中途採用がほとんどで、新卒での採用はほとんどありません。しかし、昨今、職種別採用という形式で新卒を対象とした経理財務職の採用を行う企業が出てきました。新卒で経理財務職を採用する企業は大手企業が主になります。
新卒で経理財務職の内定を目指すには、戦略的なアプローチが必要です。経理財務職は専門性が高く、企業の中枢を担う重要なポジションであるため、適切な準備と自己PRが求められます。本記事では、経理財務職の内定獲得に向けた効果的な方法を解説します。
補足ですが、私の娘もこの春に、新卒で業界No1の東証プライム上場企業から職種別採用という形式で、経理財務職として内定をもらいました。もちろん本人の頑張りが大きいですが、ESシート、企業調査、面接等の対策について、アドバイスを行い、内定を獲得できましたので、その経験も踏まえ、新卒で経理財務職の内定を獲得できるためのポイントをお伝えしたいと思います。
職種別採用企業のリサーチ
経理財務職を新卒で目指す場合、まずは「職種別採用」を行っている企業を探すことが重要です。多くの企業では総合職採用が一般的ですが、特定の職種に特化した採用を行っている企業も存在します。私が調べた限りですが、以下、経理職の職種別採用を実施している企業を紹介します。
・味の素株式会社 財務・経理

・ソニー株式会社 経理・財務

・NTTデータグループ 財務スタッフコース

・NTTファイナンス株式会社 グループファイナンス、アカウンティング

・ライオン株式会社 経理・経営戦略コース

・住友商事フィナンシャルマネジメント株式会社 アソシエイト職、スタッフ職

・住友ゴム 経理コース

・三菱マテリアル株式会社 財務・経理

・パナソニックグループ 経理・財務

・シャープ株式会社 経理

・ヤクルト株式会社 経理

・京セラ株式会社 経理財務

・三菱電機 経理・財務

・シスメックス株式会社 経理・財務・税務・管理会計

・大日本印刷株式会社 コーポレートスタッフ

・キリンホールディングス 財務コース

・マクセル株式会社 経理

これらの企業は、職種別採用を実施しており、経理職としてのキャリアをスタートさせるチャンスがあります。是非、ご参考にしてください。
経理財務職として内定を獲得するためのポイント
資格の取得
職種別採用で、経理職を希望する場合「何故経理をやりたいのか?」について説得力のある説明を行うことが必要不可欠です。その説明を裏付けるために、経理系の資格取得をおすすめします。
経理職において、日商簿記2級以上の資格は基礎的な知識を証明するものとして評価されます。特に日商簿記2級は、企業の採用で評価する最低限の基準とされています。可能であれば、1級や税理士試験の科目合格を目指すことで、他の応募者との差別化を図ることができます。
これらの資格を取得していることは、経理を希望する本気度を示すものとして説得力が増します。日商簿記3級であれば、1~2ヶ月程度の短い期間で取得することができますので、少なくても、日商簿記3級は取得しましょう。
志望動機を整理する
選考において、①何故、この会社に入社したいのか?②何故、経理をやりたいのか?は必ず聞かれますし、選考において一番重要視されるポイントになります。したがって、ESシートの記載、および面接において説得力のある説明ができるようしっかり準備しておく必要があります。
何故、この会社に入社したいのか?
志望動機について、例えば、その会社の社会貢献性等について一生懸命言及する人がいますが、それが本心であればよいのですが、おそらくほとんどの人はその会社に気に入られようという観点で、とって付けたような説明になってしまっていると思います。
職種別採用にエントリーするということは、経理財務職としてのキャリアを積んでいきたいのが、一番の志望理由だと思いますので、そこは本心で伝えてよいと思います。したがって、①何故、この会社に入社したいのか?、については、「経理財務職としてのキャリアを積んでいきたいと思い、御社が職種別採用を実施しているから」をまず伝え、そのうえで、例えばその会社の「その会社のキャリアップ制度が整備されているから」「その会社の求める人物像が自身が目指している経理財務としての将来像に近いから」「OB訪問したときに対応してくれた方が私が目指すキャリアと近いキャリアを積んでいたから」等をプラスするのがよいと思います。また、その会社の事業内容が興味を持てるものであれば「〇〇の理由で、御社の事業内容について大変興味があるから」を加えるとさらによいと思います。
何故、経理をやりたいのか?
次に、職種別採用の場合、何故、その職種をやりたいのか?についての説明が必要です。経理をやりたい理由は様々だと思いますが、その本気度を示すことができるかどうかがポイントになります。本気度を示すためには、とにかく具体的に説明することが必要です。よくあるありふれた内容は、まず不採用になります。例えば、「数字を扱うのが好きだから」はよく聞く表現ですが、具体性がなく漠然としていますので、NGです。
では、どの様に考えればよいでしょうか。次のステップで考えてみましょう。
STEP1:経理に興味をもったきっかけ
誰でも経理に興味をもったきっかけがあると思いますので、それを伝える必要があります。
例えば、次の様なきっかけです。
- 親族が会計や経理関係の仕事をしていた。
- バイトでお金の管理をした、サークルで会計係をしていた等。
- 将来の職業を検討したときに、経理という仕事を知り、〇〇というところに興味をもった。
- 将来役に立つと思い、簿記の勉強をしたが、意外に面白く興味をもった。 等
STEP2:興味をもった後の行動
興味をもつきっかけはそれぞれですが、次のその後の行動が具体的にあるかどうかが本気度を示しますので、非常に重要です。
そこで、上述した資格取得がポイントになってきます。出来れば、日商簿記2級以上、少なくても、日商簿記3級は取得しましょう。
採用する側として、経理を目指すのに、簿記を勉強していないというのは本気度が全く伝わってきません。経理を目指していて、簿記の勉強を未だ始めていないのであれば、すぐにでも始めましょう。
STEP3:性格が合っているかどうか
正直にいって、経理に向いている性格、向いていない性格があると思います。性格が経理に向いているのであれば、それもアピールする材料になります。
経理という仕事は、基本的にミスが許されず、かつどの仕事にも期限があります。また、基本的に裏方で地味な仕事です。さらに、覚えることも多く、会計や税法等継続的に勉強することが必要です。その様な仕事がつらいと思うのであれば、経理はやめておいた方がよいです。
他方、経理セクションは、数字・お金を扱うので会社にとって重要かつ中核的な部署になり、やりがいはあります。また、勉強等の努力が報われやすい仕事です。
以上から、私が思うに、次の性格の方は経理に向いていると思います。
- 責任感が強い
- 勉強好き(努力家)
- 真面目
STEP4:パソコン操作が得意
昨今の経理業務では、伝票を手入力するケースはほとんどなく、データを加工して会計システムに連携させ、仕訳を起票します。したがって、パソコン操作が得意かどうか(少なくても苦手意識がないか)は、かなり重要なポイントであり、会社側も選考にあたって重要視します。パソコン操作が得意と言い切れる学生は多くないと思いますが、経理業務においてある程度パソコン操作が得意であることが必要であることについての意識が高いということをアピールしましょう。必ずプラスの評価になります。
志望動機まとめ
以上のSTEP1からSTEP4までを整理し、なるべく説得的な説明になるようにまとめましょう。
この志望動機の内容は、エントリーシートにおいても、面接においても、かなり重要なポイントになります。
エントリーシート(ES)の書き方
エントリーシートの基本的なポイント
エントリーシート(ES)は、採用プロセスにおいて重要な役割を果たします。特に経理財務職を志望する場合、以下のポイントを押さえて作成しましょう。
具体的なエピソードを交える:経理職を志望するきっかけとなった経験や出来事を具体的に述べることで、説得力が増します。
自分の強みをアピール:数字に強い、コツコツとした作業が得意など、経理職に求められる資質を自身の経験と結びつけて伝えましょう。
企業研究を反映させる:その企業を選んだ理由を明確にし、企業の特徴や強みと自身のスキルや志向性がマッチしていることを示すことが重要です。
具体的な志望動機の書き方や例文については、以下のサイトが参考になります。
合格するエントリーシート(ES)の具体例
次に、実際に提出した具体例を紹介します。この会社の経理は、自社の経理業務の他、他社のコンサルティング等を行う業務内容でした。
この会社の他、私の娘には、合格するためのエントリーシートの表現をアドバイスし、結果、エントリーシートの通過率は100%でしたので、是非、参考にしてください。
質問:当社を志望する理由を教えてください。(200字まで)
貴社グループ各社の経理財務業務、さらに一般企業に対するコンサルティングやベンチャーキャピタル投資に関する業務等、業務の幅が非常に広いことが志望理由である。私は大学入学時から経理財務関係の仕事に強く興味があり、高い会計スキルを習得するため、日商簿記検定試験2級合格後、現在1級の勉強をしている。貴社に貢献するためには高いレベルの知識が必要と思っており、その習得した知識を最大限活かせると考えている。
質問:経理を志望した理由を教えてください。(200字まで)
大学および日商簿記1級の勉強で習得した知識を活かし一番貢献出来ると考えたからである。経理業務は、各社の財務諸表作成等の決算や一般企業に対するアウトソーシング等を行うため、期日迄に正確な業務を行うことが必要であり、そのためには高度な専門知識が必要不可欠であると思っている。また、私自身、責任感が非常に強いという自負があり、経理業務が性格的にも向いていると考えている。
質問:ご自身の強みをご記入ください。(30字まで)
主体性や周りに働きかける力、責任感の強さ。
質問:ご自身の弱みをご記入ください。(30字まで)
当事者意識が強く、仲間の仕事にも関与してしまうこと。
質問:ご自身の強みが、当社においてどのように発揮できるか考えを教えてください
。(200字以内)
ルーティン業務だけでなく、積極的に業務改善や提案を行い、周囲に働きかけ実行し定着するところまで責任をもって行うことが出来る。私は提案ももちろん大事であるが、それを周りと調整しながら実施し、かつさらに改善を重ねながら定着させていくという実行の方が大変かつ重要であると考えており、その様な強い意思をもって臨むことが必要な場面で、私自身の強みが発揮出来ると思っている。
企業研究を行う
エントリーシートが通過すれば、次はグループディスカッションや面接になります。
面接では、学生時代に頑張ったことや志望動機等について聞かれますので、それに対しきちんと話しができるよう周到な準備が必要です。
加えて、会社としては、仮に内定を出したとしても、内定辞退になる可能性がある人かどうかを必ず確認します。つまり「何故、当社に入りたいのか?」について、本気度が感じられるかどうかは、面接におけるかなり重要なポイントになります。
その本気度をはかるポイントとして、当社のことをどこまで調べているかがあります。ホームページを熟読していないのは論外ですので、それは当然として、さらに深くその会社のことを調べていると、他の学生と差別化できます。
さらに、経理職としては、数字や分析が他の職種に比べ大事ですので、具体的な数字を出しながら説明できるようにすることがポイントです。
そのため、上場会社であれば、その会社の「有価証券報告書」、「経営計画書」が公表されていますので、必ず読むようにしましょう。その会社のホームページの「IR情報」から見ることができます。
まとめ
新卒で経理財務職の内定を獲得するためには、職種別採用企業のリサーチ、必要な資格の取得、実務経験の積み方、効果的なエントリーシートの作成、そして企業研究が鍵となります。
本記事では、エントリーシートの作成までを説明しました。以上のポイントを踏まえ、戦略的に就職活動を進めることで、内定獲得の可能性を高めることができるでしょう。頑張ってください!
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